凡記録

20もなかば、看護師、文を書く

【読書感想文】アウトプット大全

樺沢紫苑「学びを結果に変えるアウトプット大全」サンクチュアリ出版

仕事で悩んだら読む本かなぁと思いました。特に、責任や役割が増えてきた社会人、あとは、今まで自己流のやり方で仕事をすすめてきて伸び悩んできた人にお勧めしたいです。

読もうと思った理由

わたしは、人に伝えることに対する強い苦手意識があります。自己完結で終わってしまう傾向があります。伝え方の技術、思考過程や修正に関する本は何冊か読んできましたが、なかなか「伝えられた!」につながらず、こじらせています。克服したいがためにこの本を買いました。

アウトプットが大切な理由

インプットが増えれば賢くはなるけれど、脳内世界が変わるだけです。しかも、意外と覚えていないものです。現実世界を変えたければ、アウトプットを増やして、PDCAサイクルを回せ、という話でした。この本では、例として「試験」をあげています。著者の樺沢さんいわく、知識を増やすのも大切だけれど、実際に問題を解いて、間違えて、修正・強化するべき箇所を明確にすることが、成長につながるのだそうです。

アウトプットの方法はいろいろ書いてあって、「よく使う文は変換機能に記憶させる」「同時処理は3つまで」「上手なプレゼンのために想定質問を作っておく」「目標達成まで小さく分けていく、報酬をつくる」とか、実践的な内容が多かったです。

成長の方向性としては、「長所伸展」と「短所克服」があるけれど、長所をのばすところからはじめる方が、楽しくて自信がつくから続けやすいみたいです。この方向性が、いま、後輩指導に悩む自分に響いたので、そのことについて述べたいと思います。

後輩指導は長所をのばすところから

OJT担当2年目、後輩の行動を評価するといえば、できないところの指摘ばかりでした。今年度は発達障害の子を担当していたこともあり、とやかく粗探しになってしまいました。できないことばかり伝えていると、後輩は指摘されることに身構えてしまうので、心のシャッターを閉じてしまいます。

また、とある研究で、悪口を言っている間はストレスホルモンが分泌されるという結果が示されているようです。できないこと=消極的な面ばかりに注目しているわたしは自らストレスを抱えにいっている状態だったのかもしれません。ほら、女上司と後輩のできなかったことを共有するのって、愚痴っぽくなりがちですからね。

後輩の成長がわかりにくい、自分も指導がつらい、そんな負の循環から抜け出すために、3年目からは「長所を伸ばす」ところから始めたい。

他の人より優れているところ、スムーズにできるところ、頑張っている姿勢とか、そういうところをほめたい。結果じゃなくて、行動を。それで信頼関係を築いてきたら、短所克服のために少し厳しいことも伝えていこうと思います。

 

6畳の図書室

小学校の頃、仲間はずれにされたことがある。
登下校のグループにいれてもらえないとか、放課後遊びに誘われない、とか。
仲間はずれにしてきた中心人物を、別の子と仲間はずれにすることもあった。
仲間はずれの理由は、調子乗ってるよね、とか、色違いの服を着た、とか、覚えていないけれど、人を傷つけたり、傷つけられたりした。
仲間はずれにされている時期に助けてくれたのは、学校にある、土日も開いている図書室。
6畳の部屋の中央にテーブルがひとつ、靴を脱いで上がる座敷だった。部屋を囲むように棚があって、漫画も小説も置いてある。
黙々と読んでいるその時間が好きだった。学校の怪談名探偵コナンギリシャ神話。
ひとりでいられるその時間が、何より好きだった。

祥太は最後に何を考えたんだろう

是枝裕和監督の「万引き家族」を観ました。

 

ほの暗い展開が続くこの映画、印象的な場面はたくさんありました。

各方面で言われているけど安藤サクラの泣き場面とか。松尾茉優のセクシーシーンとか。樹木希林のおばあちゃんぷりとか。

 

全体的に切なさを感じることが多かったのですが、一番胸を締め付けられたのは最後。

父・治(リリー・フランキー)が、児童養護施設に戻る息子・祥太(城桧吏)を見送るところ。

 

児童養護施設に戻らず、治の家に泊まった祥太。

2人は同じ布団で眠ります。暗い部屋で、敷布団に背中合わせで横になっている2人。「僕を置いて逃げようとしたの?」と、祥太が事件を起こした日のことを治に尋ねました。治は否定しません。釈明などせず、眠りについてしまいます。祥太もそれ以上の追究をしません。

翌朝。児童養護施設行きのバスの停留所に向かう途中、治は祥太にこう言うのです。「おれはただのおじさんに戻るよ」と。それまでずっと「お父さんって呼んでみな」って、期待をこめて言っていたのに、です。

 

この時の、リリー・フランキーの表情と、後ろ抱きの仕方といったら!

自信のなさをへらへらと誤魔化すお父さんが、一気にくたびれたただの中年に変貌しました。役者って、スゴイ。

祥太はさいごまで治を「お父さん」と呼びません。施設の規則を破って外泊したり、発進したバスを追いかける治を祥太は振り返っていました。祥太は、万引きや車上荒らしをする治に疑問を感じても、嫌いではないのでしょう。

置き去りにされかけた事実を突きつけられて、祥太はどう思ったのでしょう。本当は警察の嘘だったんじゃないかって確認したかったのではないでしょうか。

おじさんに戻るよ、と言われたときがお父さんと呼ぶチャンスだったかもしれないのに、言いそびれたからバスの中で振り返ったのでしょうか。そもそもお父さん、と呼びたい気持ちはあったのでしょうか。

 

特殊な環境で育った子供だから、きっと感じることは常人とは違うのでしょう…。

と、祥太の気持ちを想像したとき、「万引き家族はおもしろかったなぁ」って思うのでした。